注意機能障害等の高次脳機能障害のある方のリハビリに悩まされている方はいないでしょうか?
「注意障害のある患者の机上課題ではなく、運動を用いた動的な訓練が行いたい!」
「だけど訓練方法が分からない!」
新人や実習生はこのような悩みも持たれるかと思います。
理学療法士、作業療法士であれば机上課題だけでなく、動的な注意課題や実動作に近い方法で訓練をしたいと考える方もいるでしょう。
今回は高次脳機能障害のある方に対する、歩行等の運動を用いた訓練を紹介しましょう。
注意機能訓練を行うえで意識すること
まず、注意機能訓練を行う際は、どのような注意機能を向上させたいかをはっきりさせましょう。
全般性注意機能は持続性、選択性、転換、分配の4つに分類されます。
中には左半則空間無視のように方向性の注意障害がある方もいるでしょう。
その人のどんな注意機能を向上させたいのか、その人は注意機能の中でもどの要素が苦手なのかをまずは理解しましょう。
分配性の注意機能を向上させたいのであれば、それに合った訓練を提供する必要があります。
この後に紹介する、運動しながら認知・高次脳機能を使った訓練は二重課題となり、注意の中でも分配や転換などを必要とし、難易度の高い訓練となります。
歩行などの運動を用いた高次脳機能訓練
それでは運動しながらの高次脳機能訓練について解説していきます。
自分が行う訓練や、周りのセラピストが行なっている訓練を参考に紹介していきますね。
会話をしながら歩く
注意機能の低下があり、歩行にも不安定さがある方は、会話しながらの歩行で不安定となる場合があります。
自分は会話しながら、廊下の中央を歩いて貰うなど、すこし難易度を上げて訓練をすることもあります。
また、会話だけでなく、しりとりや計算などをしながら歩くといった練習良いかもしれません。
姿勢制御や人を避けるのに意識を向けながら課題に取り組む為、動的な高次脳機能訓練となります。
リハ室内の物を探索する
リハ室内での探索課題は動的な高次脳機能訓練として代表的ですね。
同じ職場の方でも行っている方は、多いのではないでしょうか。
リハ室にある道具を探してもらう、もしくはセラピストが道具を隠して探してもらう、このような訓練をします。
歩行だけでなく、物を探すといった注意機能の訓練にもなります。
小脳に障害のある方やバランスが不安定な方は、普通に歩けても、物を探したり人を避けたりといった要素が加わることでふらつくことがあります。
転倒に注意しながら訓練を行う必要がありますね。
患者に物を隠してもらい探索する
リハビリ室内に、お手玉やアクリルコーンを本人に隠してもらいます。
その後、隠した物品の探索課題をします。
この訓練により、歩行に加えて、記憶を保持する、物を探すといった注意機能が必要になるのです。
ワーキングメモリや二重課題が苦手な方は、ふらつく、隠した場所を忘れる、人にぶつかりそうになる、といった症状が見られます。
人混みを歩く
人混みを歩く練習も、高次脳機能の訓練になります。
これはより実動作に近い練習になりますね。
特に退院後に外を歩く機会、電車を使用する機会がある方には必要な能力です。
リハ室内の人が多い場所を歩く、外来の診察の待合スペースをお借りして歩く等、院内や施設内で人が多い場所を探して歩行訓練をします。
人の少ない場所を歩くときに比べ、避ける、譲る、といった行為が必要となります。
その為、注意機能障害や半側空間無視のある方は、歩行が安定していても衝突しそうになる方もいます。
最近は感染対策が厳しい状況にある為、一度上司に確認してから行うのが良いかもしれません。
実際場面に近い練習をする
退院後の生活を想定した実生活に近い場面での訓練も重要になります。
例えば、水の入ったコップやお椀を持って歩く練習、実際に外を歩く練習等です。
その人の生活に必要な場面を想定して訓練してみましょう。
外での歩行により、信号や道路交通法を守れるかなど、屋内では見られなかった評価をすることもできます。
その他の訓練方法
その他にも動的な高次脳機能訓練はいくつかある為、以下に箇条書きで紹介しますね。
- キャッチボールをしながらしりとりをする
- キャッチボールをしながら歩く
- 歩行などや自転車などの運動をしながらストループ課題
- 運動をしながら計算課題等
また、よりエビデンスの高い高次脳機能に対するアプローチが知りたい方は、『脳卒中治療ガイドライン2021』を参考にしてみるのも良いかもしれません。
高次脳に特化した書籍ではないですが、脳卒中後の患者に対するエビデンスの高いアプローチや評価を知ることができます。
高次脳機能訓練には難易度調整が大切
ここまでいくつか訓練方法の例を紹介してきました。
他の訓練同様に、動的な高次脳機能訓練を行う際も、難易度調整が大切です。
難易度が低すぎると、期待した訓練効果が得られないかもしれません。
また、難易度が高すぎると、混乱して訓練にならない場合や患者の意欲低下に繋がってしまいます。
例えば、リハ室で行う訓練の場合、探索する物品の数を増やす、減らすなどして難易度調整ができます。
このように、患者の能力に合わせて、難易度調整をする必要もあるのです。
まとめ
今回は、高次脳機能障害のある方に対する運動を用いたリハビリ訓練について紹介しました。
動的な高次脳機能訓練の方法は様々です。
例えば、会話をしながら歩く、リハ室内の物を探索する、物を隠して探すといった方法があります。
その人の生活を意識した、実生活に近い訓練も行う必要があります。
また、訓練を行う際は段階付けをしっかりと意識して行いましょう。
高すぎる難易度、低すぎる難易度で訓練を行ってしまうと狙った効果が得られないかもしれません。
その人の能力に合わせた訓練を提供しましょう。
コメント